2024/05/19 21:00
1.加齢・老化に伴う身体の不調の影響
2.老化のなにが腸内細菌叢を乱すのか
3.今後への期待
1.加齢・老化に伴う身体の不調の影響
今回は、誰もが加齢とともに経験する老化についてのお話です。
年齢を重ねる中で、生活の質の低下や、がん・認知症といった避けていきたい現象もありますが、これまで不明だった要因が解明されつつあります。
健康な生活を維持するために働く、腸内細菌叢=腸内フローラに乱れが生じることが様々な加齢性疾患と深く関係していることもわかってきました。
最近の研究では、老化細胞が加齢とともに体内に蓄積し、様々な炎症性物質を分泌し、体の老化を早める一因となっていることが明らかになっています。
では、詳しくみていきましょう。
2.老化の何が腸内細菌叢を乱すのか?
私たちの腸内細菌叢=腸内フローラにある粘膜面の表面積は、成人の場合、皮膚表面の200倍以上あるといわれており、これはなんと、バスケットボールコート約1面分にも相当します。この粘膜免疫で主役として働いているのが「分泌型IgA」。
「IgA」とは免疫グロブリンの一種で、粘膜から侵入してこようとする病原体などの異物を捕まえて、体内に入らないように防ぐ役割があります。
これをいかに効果的に誘導したり制御することで感染症から自身を守る重要なカギとなるのです。
若年齢期では、宿主と腸内細菌叢の共存関係が維持されている状況ですが、老化が招く作用とはどういったことのなのでしょうか。
老化が起こるとは、
①長期的な腸内細菌叢の刺激により、B細胞(感染を防ぐために必要な細胞)に細胞老化が誘導されてしまいます
②その後、老化B細胞が体内へ蓄積され
③IgAの産生量および機能低下
④結果として腸内細菌叢のバランスの乱れが生じます。
つまり、IgA自体が老化するのではなく産生されたB細胞が腸内細菌により長期的に刺激を受けることで細胞老化を起こし、IgAの産生量や多様性に変化が生じることで、腸内細菌叢の乱れを引き起こすことが明らかになりました。
3.今後への期待
腸内細菌叢が乱れる原因の理解につながる研究結果がでたことにより、今後の腸内細菌叢の乱れを防ぐ新たな予防法の開発につながります。逆に、腸内細菌叢を若い状態に保つことで、加齢にともなう疾患の発症リスクを減らすこともできるのです。
安全かつ効果的にB細胞の細胞老化を抑制する方法の開発が、健康寿命の延伸への貢献につながりますね。