2024/04/10 21:00
今回は、腸内細菌って一体何なのか?
腸内細菌ってどのように生きているのか?をお話したいと思います。
まず、腸内細菌が存在している ”腸” とは、
地球上で最も ”細菌が高密度に生息している環境” なのです。
つまり、細菌にとって栄養が豊富に入手できる場所ということがわかります。
また、これらの細菌を全体として『腸内細菌叢』といい、
聞きなれたワードいうと『腸内フローラ』のことを指します。
1. 腸内細菌の栄養
そもそも腸内細菌にとっての”栄養”とは何なのでしょうか?
それは、人間の細胞とほとんど変わらず、グルコース(ブドウ糖)やアミノ酸です。
それをより細かいものに分解して、エネルギーを生み出す作業をします。
最も好むのはグルコースですが、多くはその過程で形を残したまま大腸に到達してくることはなく、
消化・吸収を免れた、食物繊維や難消化性タンパク質、
つまり『残りかす』をうまく活用できる菌のみが腸内に棲みついているのです。
また、分解されていった物を『短鎖脂肪酸』と言い、
腸内細菌叢の知るのには重要なキーワードとなります。
別ページで解説しますので、みなさんこのワードを覚えておいてくださいね。
2. 腸内細菌が腸内で生き残るには?
腸といっても、部位によって生存している細菌叢の種類が変わります。
上部消化管(口腔、食道、胃)には『ラクトバチルス菌』、
下部消化管(十二指腸、空腸、回腸、盲腸、直腸)では『ビフィズス菌』がそれぞれ優位に存在しており、
上部は好気性菌(酸素を好む菌)、下部は嫌気性菌(酸素を嫌う菌)となっています。
そして、細菌が腸管内に定着するパターンには、
①腸管の粘膜に物理的に接着する
②腸管から排泄される速度よりも早く腸内で増殖することで、
見かけ上は定着しているように見える
この2種類のうち ②のほうが圧倒的に多いのです。
例えば、ヨーグルトを毎日食べてもプロバイオティクス
(ビフィズス菌や乳酸菌など人の腸に存在する善玉菌のこと)が定着しにくいと言われているのは、
すでに自分の腸内に定着している菌と比べると、そのプロバイオティクスの適応能が低いためなのです。
よくヨーグルトや乳酸菌飲料、発酵食品を毎日食べ続けるといいという表現が多いのはこのためです。
ただし面白いことに、腸内細菌叢のバランスがよくない状況で定着した菌もあります。
それは2010年にNature誌に報告されている研究で、
日本人の便の遺伝子から海苔などの海藻成分の分解ができる遺伝子が見つかっています。
海藻をよく食べる日本人において、海藻の繊維質が利用できることが腸内定着に有利であったため という研究結果があり、北米系人からは見つかってはいないのです!
腸内には個々の環境があり、環境に適した細菌叢が定着しています。
そのため、いろいろ合うものを試すということも大切になってきます。
身体にとって有益に働く細菌を取り込んだり、
移植しただけでは定着するというのは簡単なことではない。
ですが、食習慣や生活習慣の改善によって、細菌に適した腸内環境をつくる手助けになることはできるのではないかと考えられています。
3. 食物繊維とおならの不思議を解説!
どうしてサツマイモを食べるとおならが出るのでしょうか?
それは、腸内細菌の大好物であるデンプンに秘密があります。
サツマイモというのは、デンプンが食物繊維に絡んでいる状態。
我々がサツマイモを食べると、デンプンの一部は食物繊維の中に入りこんでおり、
未消化で大腸に届きます。
そして、大腸で腸内細菌によって未消化のデンプンを栄養として分解し、その時にガスが出るのです。
コメやジャガイモではおならが出にくいのは、この元のデンプンが食物繊維にくるまれておらず、未消化のデンプンがほとんどでないためなのです。不思議ですね。
4. 食事が変われば、腸内細菌叢も変えられる!
食物繊維が不十分な状態が続くと、腸粘膜のバリアとして機能する『ムチン』を
栄養源としている菌が過剰分解をしてしまい、その結果、バリア機能が低下し感染症への感受性が高まるとされる研究結果が2016年に報告されています。
実際に栄養素だけの摂取よりも食物繊維を摂取することが大切で、腸内細菌は食物繊維を利用することで感染症への感受性を抑えることが出来ています。
我々は食べ物を、”人間が利用する栄養素” ととらえがちですが、
この未消化物が腸内細菌の餌にもなるということを意識していくことが大切です。